「あゝ、荒野」感想 その3
今日で千秋楽ですね。
出演者および関係者の皆様、おめでとうございます。
業界、一般、各方面からの称賛の声も高く、今回の公演は本当に大成功だったと思います。
心からの賛辞を送ります。
願わくば、しっかり「別撮り」方式でDVD化して頂きたく!
いえ、NYまで来てくれるんならもちろん見に行きますけどね!!!
さて。
感想その1では照明と舞台装置について、感想その2では松本潤くんの演技についての感想を語りました。
今日はバリカンを演じた小出恵介さんについてです。
もう終演後だけど一応畳んでおきます。
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小出恵介さんという役者さんを私はよく知らなくて、「のだめ」の真澄ちゃんと聞いて、ああ、あの表現の豊かな人ね、ってくらいの予備知識しか持っていませんでした。
小出さんのバリカンは、またびっくりするくらい可哀相な人で!(褒めてます、これ。)
だってグラビアとか見ると、普通にかっこいい人じゃないですか。その人がまったくかっこよく見えちゃいけないんですからこれは大変です。で、ほんとにかっこ良くみえないの。偉い!
バリカン、ほんとに、情けなくって泣けてきます。(もっと褒めてますから、これ!)
そしてバリカンの持つ繊細な部分が良く表現されていたと思います。
バリカンは純粋で、何かしたいともがくんだけど、そのもがき方さえよく分からないのね。だから新次のような振り切れている男に憧れるし、側にいれば自分もなんとかなるかな?って思ったわけですね。
でもそうはならなかった。新次はもともと強かったけそれにも増してどんどん頭角を現していくのに、一緒にいる自分はどうもいまひとつ…。
私にはあの「75セントのブルース」(Six-Bits Blues by Langston Hughes)の詩がとても印象的でした。Hughesはハーレムルネサンスの詩人で、この取り上げられた部分は「とにかくどこでもいいから人種差別のはびこる南部から逃げたい」という詩なわけです。それがまたうまい具合にバリカンの現状打破を願う気持ちとリンクしてさらに印象深かったという。同時に寺山修司作品の深さを感じました。(小説2冊買って来たので後ほど読みます。)
小出くん、鼻水たらしながら一生懸命独白してましたね。それくらい演者にとっても魂を揺さぶられる台詞なんでしょう。
こんなにじとっと内向きなバリカンに対して、新次がいらつきもせずよく面倒をみてやったのは何故なんでしょう。
潤くんのインタビュー曰く、二人は陰と陽、つまり表裏一体。新次はバリカンの中に自分を見出したという解釈で演じていたのでしょうか。
まぁ、新次に至ってはもっと単純に、慕われて情が沸いただけだったかも?とも思うんですが。
それにしてもバリカンはずるい。新次にそんなにも重い荷を背負わせて。
新次も新次でバカっていうか、懐が大きすぎるっていうか、優しすぎるっていうか。
そんなにバリカンが可愛いか!
そんなにバリカンを救ってやりたいか!
…カワイーんだよね。
あのジャングルジムのシーンで、バリカンに向けて手を差し伸べる新次のやっさしい〜表情。
誰に対しても尖がって笑い顔さえシャープな新次がみせる唯一和らいだ笑顔なんですよ。
街が廃墟、人は幽霊だと言うバリカンに少しの救いを見出させてやりたい新次。
新次にとってはバリカンは安らぎですか〜?見守るべき者ですか?
そんな相手に対戦を挑まれた新次の気持ちは!あの苦渋に満ちた哀しい目を見ましたかっ!
バリカンのばかやろ〜。(はい、完璧新次目線です。)
あー、また長いですね。それに小出さんのことというよりバリカンのことばっかりだな、こりゃ。
小出さん、よかったです。吸い付けられるような絶対的存在感の新次を前にしてもまったく霞むことが無い。それでいて途方もなく救いようのない内気なバリカンを影のままに表現していて。
こんなに能力の拮抗する(タイプは違えど)同年の俳優をこのタイミングでこの芝居にキャスティングできたことは幸運ですね。どちらかが著しく劣っていたり勝っていたりしたら芝居が壊れてしまうから…。
まだ女優さんやベテラン勢のことに全然たどりついてないじゃん!ということで、また続きます。
すみませんがもうしばらくお付き合いください。平伏。-----
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AUTHOR: hal
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DATE: 12/02/2011 18:41:29
TITLE: こんばんは
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また来ちゃいました。というか、楽しみにしています。
>こんなに能力の拮抗する(タイプは違えど)同年の俳優をこのタイミングでこの芝居にキャスティングできたことは幸運ですね。どちらかが著しく劣っていたり勝っていたりしたら芝居が壊れてしまうから…。
全くもって同感です。
どなたかも呟いてらっしゃいましたが、加えてこの二人の相性も良かったのだろうなあと思います。
ともあれ、無事に――素晴らしい楽を迎えられてよかったですね!