松本潤担ブログ @ニューヨーク830番地

遠くても。同じ空の下、繋がってるよ、とあなたが言ってくれるから。

THE BEE/野田秀樹 in New York

寒かった!今日のニューヨークシティは最低気温華氏15度。

手袋をせずにいると30秒で手が凍る寒さです。

そんな中、ジャパンソサエティにて東京芸術劇場・SOHO THEATRE/London・NODA MAPの筒井康隆原作、野田秀樹&Colin Teevan脚本(共著)、野田秀樹演出の「THE BEE」を観て参りました。

THE BEE

野田さんというとお芝居をあまり観ない潤くんファンには「白夜の女騎士(ワルキューレ)」の脚本家としてお馴染みかと思います。

80年代に小劇団ブームのトップだった夢の遊民社から解散後は個人活動を経てNODA MAPを立ち上げて今に至る俳優・脚本・演出をマルチにこなすお方です。

以下、ざっくりと感想です。(ネタバレありですので東京公演をご覧になる方は注意!)

1/5から始まった全10公演の最終日。客席数約240程の劇場に空席は5〜6程。本公演は全編英語上演(中日には日本語字幕付きのソワレが2回もあった)ということで、観客の9割は非日本人。老若男女とも、普通にニューヨークの芝居好きが集まっていたという印象です。

あらすじ:

「ある日、主人公であるビジネスマン(イドウ)が帰宅すると、妻と子を人質にイドウ宅に脱獄犯(オゴロ)が立て篭もっており、イドウはリポーターに取り囲まれる。頼りにならない刑事(ドドヤマ)に業を煮やしたイドウは、オゴロの別れた妻にオゴロの説得を依頼しにオゴロの妻宅を訪れる。ところがかたくなに彼の嘆願を拒絶した妻に追い詰められたイドウは、同行した警官の銃を奪い、オゴロの妻と息子を人質に立て篭もることになる。そして…」

セットはごく簡素な赤いプラットフォーム、と思いきや、マジックミラーのような壁(窓とドアつき)を上手に取り入れて屋内外、計4場面を表現していました。

私は原作を知らずに観たので、この話がいったいどこに着地するのか、中盤とても気になったのですが…なるほど〜、そう来たか、という感じ。

演出的な終わり方(スポット光らせて瞬時にブラックアウト)は想像した通りで、まだ私も捨てたもんじゃないな、と思ったり。

舞台上に登場するのはたった4人の役者たち。

でもその4人が複数の役を演じ分けながら、場面を瞬時に変え、話を展開させていくのがとてもスリリングで興味深かったです。これぞ小劇場の原点、といった感じがあってうきうきしました。

小道具の使い方もよく考えてあって流石です。鉛筆やロールペーパー、輪ゴムの使い方が特に秀逸。私は基本的にひとつの物を色々な用途に用いるのが賢くて好きなんだと気づかされました。

少年が鉛筆を広げて持ったままなのはどうしてかな、と気になっていたら、なんと鉛筆が指を表しており、そしてその鉛筆を…(超ねたバレなので控えます。)度肝を抜かれました。ヤラレタ!って感じ。

脱獄犯の妻の役を紅一点のKathryn Hunterが演じずに、遭えて野田さんが演じ、Kathrynがビジネスマン役を演じることで意外性、或いは非現実感が強調された気がします。野田さんが脛毛もきれいに処理してちゃんと女性を演じてました。あれ、野田さんとKathrynが逆だったらどうなんだろう…。芝居としての面白味が半減するかもしれないな。それに性的なことする場面が本当に卑猥でヤバくなっちゃうかも。

ちょっと気になって日本での配役がどうなのかと「あゝ、荒野」記事めあてで購入した「演劇ぶっく」の広告ページを見てみたら、宮沢りえさんが出演されるとのこと。え〜、りえちゃんがあれやるんだ…。ちょっとビックリ。結構骨太な役ですよ。私的にはそれこそ大竹しのぶさんとKathrynが重なる感じなんです。「北の国から」以降の宮沢さんの活躍を私は知らないので想像がつかないだけなんですけどね。

とにかく、今日の4人の俳優陣はみんな芸達者で、見事に複数の役を演じ分けていました。

内容的にはかなり残虐的かつ性的表現を多分に含みますのでばっちり大人向け作品です。かなり衝撃的。

これ、ジャンル分けするとすれば不条理劇に入るのかな…?もう、ふたりの少年(一人は舞台上には出てこない)

がかわいそうでしょうがないです。

こういうのが朝日舞台芸術賞とか読売演劇大賞とか獲得するんですね。納得するとともに、日本の演劇界ってハードコアだなぁ…って思ったりしました。

こういうのが普通〜に受け入れられているところにジャニタレファンが「あゝ、荒野」みたいなのを観に行っちゃうと「舞台ってあんなことしていいの?!」って感想が生まれるんですね。なるほど〜。ちなみに「あゝ、荒野」の性表現はぜーんぜんなんでもないですから。超ソフトです(笑)。

とにかく、テンポがよく、よく練られていて飽きさせません。インターミッションなしの1幕もので1時間半ですが、あっという間に感じました。

何曲か使われていた挿入歌が日本語で、それが妙に英語の芝居にシュールさを与えていた気がします。それと「ロンドンロンドン楽しいロンドン愉快なロンドン♪」に反応して笑えるのは日本人だけなんだなぁ〜。残念。

ニューヨーク公演後は英語バージョンが東京で2月に上演され、4月からは日本人キャストの日本語バージョンでの日本ツアーが始まるそうです。

内容的に残虐で猥褻な部分も含まれ、決してぎゃははと笑う面白さはありませんが、お芝居として総合的に見た場合面白い作品。一見の価値ありです。